トルコの民族舞踊 概説



どんどん情報を追加していく予定です。。。
(トルコの県区分図は「Wikipedia」から)

*FirefoxやNetscapeなどのブラウザですと多少見難いページがあります。


「トルコの民族舞踊」とは?

日本で「フォークダンス」と言えばアメリカかハンガリーを中心とするバルカン半島、中東ではイスラエルのものがメインになっており、残念ながらトルコのフォークダンスはあまり知られていません。そして日本で「トルコの踊り」と紹介されるものは、何故かスーフィー(神秘主義:特にルーミーの創設したメフレヴィー教団)の行う「セマー」という宗教儀式(右写真)の場合が多いのですが、これは踊りとは言えない、と私は思っています。一般的には「旋回舞踊」とも呼ばれており、音楽に合わせてゆったりぐるぐるとまわりはじめてスピードが速くなっていくのですが、ある時点でスッと止まります。これは本当に難しいものです。しかしセマーは今や「舞踊」として観光ショーの一つになってしまっている面もありますが、元は神へ近づくための手段の一つであり、限られた人々しか行いませんでした。精神面が重視されているもので、「踊り」のように見えるけれども踊りではないのではないでしょうか。(私見です)

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また、トルコの「踊り」というと「ベリーダンスでしょう?」とも言われるのですが、ちょっと違います。ベリーダンスは確かにトルコで発展した踊りで(発祥は諸説様々)、民俗舞踊の一部だとは思うのですが、ベリーダンスが「(基本は)一人で踊る・女性のみ・肌を見せる」のに対し、トルコのフォークダンスは「グループで踊る・男女ともに踊る・肌はほぼ見せない」という真逆なものです。ステップを踏み、フォーメーションを変えながら揃って同じ動きをするのがポイントでもあるので、周りと合わせられる人に向いているかもしれません。

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トルコでは日本の二倍以上ある広い国土の各地方に、様々な衣装と様々な踊りがあります。とはいえ、日常的に踊るものではないので(トルコ人は日常的にも踊り自体は踊りますが、フォークダンスとちょっと違います)見られる機会は少々限られていますが、今はAnadolu Atesi(Fire of Anatolia)など大手だけでなく、様々なグループが観光地などで公演を行っています。ベリーダンスショーの一部に組み合わされている場合もあります。また、小学校〜大学にはかならずフォークダンスのクラブがあるので学校のイベント事や地方大会、地方の祭りなどでも見る事が出来ます。


トルコのフォークダンス(Türk Halk Oyunları)を「民族」舞踊と「民俗」舞踊、どちらとして紹介するかはなかなか判断が難しいところです。一般的にはFolk Dance = 民俗舞踊、Ethnic Dance/National Dance = 民族舞踊 とする場合が多いかと思うのですが(国や団体によってまちまち)、観客を対象とせず民衆の間で踊られる、生活に密着し楽しみのために踊られる伝統的舞踊という「民俗」舞踊の側面が、現在のトルコのフォークダンスからは抜けています。結婚式などこの意味で踊られる場合も確かにあるのですが、多くは国家によって収集・研究・行政単位で類別され、舞台化するという過程を辿っており、元は「民俗」舞踊でしたが、現在では舞台芸術・国を代表する舞踊という意味での「民族」舞踊の側面が強くなっています。とはいえ、どれか1つの踊りが国を代表するということはなく、各地の民族・地域性の多様さは表現しつつも「トルコ人」としてはまとまっています。そのためTürk Halk Oyunlarıを「民衆舞踊」、現在のトルコの舞踊を「国民舞踊」と表現する研究者もいらっしゃいます。

祝い事や通過儀礼にも踊られる「民俗」的側面も持っている、また、トルコは様々な民族が混在している国である、ということは重々承知の上で、現在では舞台化され国によって規定されているという意味も含め、こちらのサイトではより一般的な用語「民族舞踊」を使用します。


踊りの種類

・多くが集団で踊られます。男女が混じって踊る事はあまり無く、同じ場にいても男女別のグループで踊る事が多いです。カップルダンスもありますが、集団対集団という感じです。

・ステップは多様で、日常生活や動物などの動作を表象するものと、特に意味の無いものがあります。

・地域によって踊り方は異なりますが、いくつかのパターンがあり、集団でしっかり手をつなぎ列になるもの(ホロン、ハライ)、集団で一人ずつが両手を挙げるもの、2列になって相対し踊るもの(カルシュラマ)などがあります。

ホロン Horon

黒海地方の踊り。手をつなぎ一列になって踊るかなり速いテンポ(7/16拍子)の踊り。ダヴルのほかに、ケメンチェという独特の楽器を使うことが多い。

ハライ Halay

アナトリア中部から南西部地方で踊られる。民謡が歌われることもある。

ゼイベク Zeybek

エーゲ海付近の西トルコで始まったもので、ヒロイズムや勇気などを表象する踊り。男性が踊る事が多いが、女性も踊る地方もある。ゆっくりとしているが力強い動きをする。トルコの舞踊には珍しく、一人か二人で踊ることもある(グループで踊ることもある)。

バー(バール) Bar

アナトリア東部の踊り。アルメニア語の「踊り」に由来する。手をつなぐか、肩や腕を組んで列(開いた輪)になって踊る。常に飛び跳ねるようにリズムを取り、その中でしゃがんだり立ったりする。

カシュック・オユヌ Kaşık Oyunu (Oyunları)

木のスプーンをカスタネットのように使う踊りで、アナトリア中部から南部の地中海地方で踊られる。民謡を伴う。

カルシュラマ Karşılama

2人(2列)が相対し、同じ動作をするような踊りで、「カルシュラマ」は「対峙する、あいさつする」の意。トルコの北西部に多く、婚礼や祭りの際に踊られる。テンポやスタイルは地域によって異なる。

クルチ・カルカン Kılıç Kalkan

剣と盾を持って踊るもので、ブルサで踊られる。踊るのは男性のみで、オスマン帝国時代の戦いを模している。伴奏はつかず、剣と盾を合わせる激しい音のみで踊られる。

チフテテリ Çiftetelli

イズミルから渡ってきたギリシャ人によって広まった踊りで、中東のベリーダンスに似ているが、よりゆったりとしたもの。

レズギンカ Lezginka

コーカサス地方の踊り。ダイナミックで速い動きが特徴的で、男性のソロまたは男女ペアで踊られる。ソロの場合はつま先立ちをしたり、非常に早く足を組み替えるステップを踏んだりと、アクロバティックな動きをする。


衣装

民族舞踊の衣装に関して

トルコにおいて踊りと衣装が豊富な理由は、様々な踊りと文化を持った地域の人々(キルギス、ウズベク、ウイグル、アゼルバイジャン、タタール、バルカンなど)がトルコへ移住してきて混じっていったからというもの、また、セルジューク・トルコとオスマン帝国が支配地を広げ、その土地の人々と文化を取り込んだというもの、さらに気候風土が多様なため衣装やモチーフの多様性を作ったとも言われています。

現在、実生活の中では民族衣装は全く着られず、楽器奏者やプロのみが着るものとなっています。

各地のダンスグループで使われる衣装は固定化してきており、地方・都市ごとにほぼ固有の衣性がありますが、大きくわけた地域ごとにはやや類似性が見られます。衣装は魅せるためのものなので、割と華やかです。ただし色や柄、細かいパーツなどは「コレ」と決まっているわけではなく、「こんな感じのもの」という大まかなルールがあるだけのように見えます。

詳しくは地域ごとの特色のページをご覧ください。



楽器

よく使われる楽器

音楽は生演奏が基本です。演奏者と共に練習もします。ですが、現在は録音した音楽に合わせて踊る事もあります。

よく使われる楽器はダヴル(太鼓)とズルナ(チャルメラのようなもの)。右写真の右側の男性が持っているのがダヴル。右手はバチ、左手には細い菜箸のようなバチを持っています。左側の男性が吹いているのがズルナ。甲高い音がします。この2つは踊りだけでなく色々なところでみられ、こちらの写真は兵役に行く人を送り出す日に雇われた方々でした。

そのほかには特定の地方でしかつかわないもの(黒海のケメンチェなど)がありますが、そちらは随時使用される楽器のページでご紹介したいと思います。