トルコのフォークダンスについてご存知でしょうか?
トルコ自体は知名度があり沢山の方が観光に訪れる国なのに、あまり知られていないフォークダンスとその衣装に焦点を当てて語ります。
Keywords:
トルコ民族舞踊 / トルコ民俗舞踊 / トルコのフォークダンス / Folkdance / Ethnic dance / National Dance / Türk Halk Oyunları / Halkevleri
日本で「フォークダンス」と言えばアメリカかハンガリーを中心とするバルカン半島、中東ではイスラエルのものがメインになっており、残念ながらトルコのフォークダンスはあまり知られていません。
そして日本で「トルコの踊り」と紹介されるものは、何故かスーフィー(神秘主義:特にルーミーの創設したメフレヴィー教団)の行う「セマー」という宗教儀式(写真)の場合が多いのですが、これは踊りとは言えない、と(私は)思っています。こちらは一般的には「旋回舞踊」とも呼ばれており、音楽に合わせてゆったりぐるぐるとまわりはじめてスピードが速くなっていくのですが、ある時点でスッと止まります。これは本当に難しいものです。
セマーは今や「舞踊」として観光ショーの一つになってしまっている面もありますが、元は神へ近づくための手段の一つ(修行)であり、限られた人々しか行いませんでした(し、今でも限られた人しか行いません)。精神面が重視されているもので、「踊り」のように見えるけれども踊りではない、と、私は思います。
また、「トルコの踊り」というと「ベリーダンスでしょう?」とも言われるのですが、ちょっと違います。
ベリーダンスは確かにトルコで発展した踊りで(発祥の地についてはエジプトやアラブなど諸説様々)、フォークダンスの一部だとは思うのですが、ベリーダンスが「(基本は)一人で踊る・女性のみが踊る・肌を見せる」のに対し、トルコのフォークダンスは「グループで踊る・男女ともに踊る・肌はほぼ見せない」という真逆なものです。(最近は男性のベリーダンサーも居ますが)
現在のトルコのフォークダンスは、揃ってステップを踏み、フォーメーションを変えながら同じ動きをするのがポイントでもあるので、周りと合わせられる人に向いているかもしれません。
トルコのフォークダンス(Türk Halk Oyunları)を「民族」舞踊と「民俗」舞踊、どちらと翻訳して紹介するかはなかなか判断が難しいところです。
また、果たして今見られるこれらの 踊り/楽器/衣装 が「伝統的」なのか?という問題もあります。
と、いうのも、一般的には Folk Dance = 民俗舞踊、Ethnic Dance / National Dance = 民族舞踊 とする場合が多いかと思います(国や団体によって定義はまちまち)。
しかし「観客を対象とせず民衆の間で踊られる、生活に密着し楽しみのために踊られる伝統的舞踊」という「民俗舞踊」の側面が、現在のトルコのフォークダンスからはやや抜けています。結婚式などこの意味で踊られる場合も確かにありますが、トルコで Halk Oyunlar、Folklor Oynamak と言う場合、主に「観客の前で、民俗的な衣装を着て踊るもの」を指すことがほとんどです。
その理由としては、「トルコのフォークダンス」を体系化するにあたり、各地に散らばっていた踊りを、共和国発足後に政府が収集・研究し、行政単位で類別し舞台化、その過程で他地域との交流が深まりローカルな踊りが全国的に広がっていくという経緯がありました。踊り手も、ローカル&地元の成人から8〜25歳の学生へと変化しました。つまり、元は「民俗」舞踊でしたが、現在では舞台芸術・国を代表する多様な地域文化と舞踊(の数々)、多様でありながらも「トルコのフォークダンス」というところに一元化されているという点では「民族」舞踊という側面がやや強くなっています。そのためトルコ語の Türk Halk Oyunları を「民衆舞踊」、現在のトルコの、公定化された国民文化としての踊りを「国民舞踊」と表現する研究者もいらっしゃいます。
このあたりの事情はとても複雑で、調べれば調べるほど、文化的社会的な話のほか、政治的な絡みや共和国政府の方針その他ナンダカンダ色々ありまして、、、趣味の範囲で調べている私がどうこう言えるものでもないと感じはじめました。
そのため、以前は【祝い事や通過儀礼にも踊られる“民俗”的側面も持っている、また、トルコは様々な民族が混在している国である、ということは重々承知の上で、現在では舞台化され「国によって規定されているパターンが存在する」という意味も含め、より一般的な用語「民族舞踊」を使用する】としていましたが、今回は「フォークダンス」に統一させることにしました。
(;´∀`)カタカナって素晴らしい。また色々調べて考えが変わったら、そっと直すかもしれません。
トルコでは日本の二倍以上ある広い国土の各地方に、様々な衣装と様々な踊りがあります。
とはいえ、日常的に踊るものではないので(トルコ人は日常的にも踊り自体は踊りますが、ここでいうHalk Oyunlarとちょっと違います)見られる機会は少々限られています。
街のお祭り・フェスティバル・セレモニーなど / 結婚式などのお祝い事 / フォークダンス大会(地区大会/全国大会) など 公の場で踊られるほか、観光地でベリーダンスショーの一部となったり、Anadolu Ateşi(Fire of Anatolia)など大手グループが各地を公演してまわることもあります。
また、小学校〜大学にはかならずクラブがあり、街にもフォークダンスチームがあるので、運が良ければ練習風景を見ることが出来るかもしれません。
*観光客でも見やすいところ*
・Anadolu Ateşi(Fire of Anatolia)
一時期日本でも流行ったアイルランドのRiverdance風の、やや現代風アレンジが利いていたもの。
・Hodjapasha(Istanbul)
各地のフォークダンスがダイジェスト的にみられるそうです。
・Kervansaray Restaurant & Turkish Night
ベリーダンスショーとフォークダンスが同じ舞台で見られます。お料理はちょっとアレですが、、、エンタメ感はよく考えられているので時間を節約したい方向け。私が見たときはフォークダンスはホロンとカルシュラマ、チャイダチラ、メンディル、カシュックル・オユヌ、カフカスあたりのダイジェストでした。
舞踊自体はとても盛んなのに、何故か常設で踊りを見ることが出来る所って本当に少ないんですよね…。逆に、上述の私が「踊り」とは言い難いと思っている「セマー」は「ここに行けば見られる」ところが割とあります。逆転現象。。。
もしここでフォークダンスが見られるよーというのを知っている方がいらしたら、是非教えてください。