黒海地方：黒海地方だが黒海に面しておらず、森林と山に囲まれている。温泉と泉も多いが、その分地震もあり、1999年のトルコ北西部地震では震源地となったドゥズジェが同県にあった（現在は独立してドゥズジェ県）。古代ビテュニア（Bitinya）王国の領内に位置し、紀元前から人が住んでいる。11世紀に移住してきたトルクメン人によってボルと名付けられた。
見所：湖や森林、ハイキングやクライミング、スキーなどアウトドアアクティビティが気軽に出来るリゾートとして人気。イスタンブルとアンカラの中間にあることから交易の中継地としての役割も果たし、同県Mengenの街は料理上手として知られており、大統領の料理人のトレーニングもここの料理学校で行われる。毎年夏（6月または8月）に国際料理フェスティバル（Mengen Uluslararası Aşçılık Ve Turizm Festivali）が行われる。
主な踊りの種類
地方としては黒海地方だが、ハライやバーなどいわゆる黒海の踊りではなく、西側寄りのカルシュラマやゼイベクが支配的。指揮者はおらず、個々人が割と自由な雰囲気で、こまかく肩を揺らし小刻みなステップを踏みながら、スプーンを打ち鳴らすものが多い。腕は肘で曲げた状態を横にキープするか、上下させる。あまり大きな動作は無い。
基本的には男女は別々、どの踊りも2人以上で踊る。
◆カシュック(ル)・オユンラル Kaşık Oyunlar
カルシュラマ Karşılama / ゼイベク Zeybek / チフテテッリ Çiftetelli
◇代表的な踊り
Göynük Zeybeği --- 輪になってスプーンを鳴らしながらゆっくり立ったり座ったり集まったり広がったりする軽快なゼイベク。
Karaköy Sekmesi --- 民謡を伴う。放牧に出て戻らぬ羊飼いを待つ婚約者の話。
Yesil Ördek / Ördek --- 民謡を伴う。カモ（またはアヒル）を表す踊りで、途中座った状態で互いの肩に頭を預ける動作があるが、これは眠ったカモを表す。元はKöçekの踊りで、眠った状態で止まり、チップをもらうまで動かず待つ。
Köroglu --- 男性のみ。剣と盾を持つ人を指揮者とし、両手に短剣を持って打ち鳴らしながら踊る。民謡を伴う。（短剣を持つ踊りとしては、他に東アナトリアで行われるHançer Barıがある）
Meşeli --- 輪や列になり集まったり離れたりしながら軽快なステップを踏む。
Köçek Oyunlar --- Mengenの街はKöçek（男性のいわゆるベリーダンサー/踊り子：女性はÇengi）の伝統が残る数少ない地域。男性が女性の衣装をつけ、フィンガーシンバル（Zil）を打ち鳴らしながら踊る。
使われる楽器
女性の踊りはほぼすべてに民謡が伴う。
◆ダヴル Davul ／ ズルナ Zurna
◇その他：女性の踊りでは テフ Tef(タンバリン) も使う。
衣装
◆踊りと同様に、地方としては黒海地方だが、衣装は西側と中央アナトリアの中間的なもの。女性の赤地に市松模様の布を使ったウチュエテッキとシャルワールは珍しく、クロスステッチのたっぷりと入ったワンピースと併せてとても可愛い。男性の衣装は資料によりかなりマチマチ。
◆女性は ÇekiまたはGazと呼ばれる赤いサテン布を巻いたフェズ Fesをかぶり、金貨やチェーンの垂れ下がった銀製のTepelik（Takke）を上にのせる。上からÇemberと呼ばれる白地でバラのクロスステッチ刺繍のある、プルオヤ（スパンコールの縁飾り）付きの布でおさえる。赤いリボンに金貨をつけたものをネックレスとして付ける。髪は腰丈で4〜60本と細く三つ編みにし、ナザルボンジュゥ（魔除けのビーズ）を付ける（現在は付け毛）。Akça Göynekという白無地で前面にクロスステッチ刺繍がされた膝丈のワンピースを着、その上に縞模様または市松模様のÜç Etekを着て前の左右のパーツをたくし上げてベルトに挟む（挟まないこともある）。色は一般的にボルドーまたは濃紺。同じ布地のŞalvarを履く。Fermane/Fermana/Fermeneと呼ばれる長袖ジャケット（色はボルドー、濃紺、深緑など）またはİşlikを羽織る。いずれも袖と前面に銀糸刺繍がしてあり、Fermaneはバラが多く、İşlikは羊の角や鏡模様など様々なモチーフがある。靴下はウールの手編みで、バラ模様のことが多い。靴としてはクナゲジェシや結婚式などハレの日は革靴のYemeniを履き、普段は革製のサンダルÇarıkを履く。（といっても現在は皆Yemeni）
大きなバックルの付いた銀製ベルトまたは皮のベルトを付け、ツゲの木で出来たスプーンを左右2本ずつ（合計4本）持つ（踊りによる）。
◆男性は衿なしの長袖シャツを着て、上に袖なしの上着Fermana/Fermane（Yelek：ベスト）を着る。前後に刺繍がある。Kartal kanat（鷲の羽根）と呼ばれる、疑似袖のような飾りのついたものもある（図はこちら）。側面に刺繍のある、脚部分の細いŞalvarを履き、腰に腰布/腰帯（Kuşak）を巻く。その上から革で出来た武器用ベルトSilahlıkを巻く。ここには剣、ナイフ、銃、オイル入れ、砥石などを入れる（踊りの際は剣やナイフのみの事がほとんど）。ウールで編んだ靴下を履き、靴としては、かかと無しローファー靴または長靴、Çarık（革サンダル）などTPOに合わせて色々履く（図ではチャルク）。
頭にはフェルトの帽子（Keçe Küllah）をかぶったり、絹の布（Poşu）を巻くこともある。女性同様、ツゲの木で出来たスプーンを左右2本ずつ（合計4本）持つ（踊りによる）。
＊男女共に上着はFermana/Fermaneと呼ばれているが、ここでは袖の有無は関係なく「上着」のような意味合い。