黒海地方：トルコ最大のヘーゼルナッツの産地。丘陵地帯が多いためコーンとキャベツが多く作られており、さくらんぼの木の原産地であるとされている。
紀元前2世紀にやってきたギリシア人の植民者によって町が創設され、その後ビザンチン帝国、トレビゾンド帝国等支配者が次々と変わってきたが1461年にオスマン帝国のメフメト2世により帝国領とされた。
見所：山岳地帯のDereli（デレリ）ではハイキングが楽しめるほか、5月20日～23日にはAksu Şenliği（Uluslararası Karadeniz Giresun Aksu Festivali）という文化祭が行われている（元々はMayıs Yedisiというシャーマニズム的祭礼）。
主な踊りの種類
黒海地方の中でも気候や自然がさほど厳しくないことから、人間も踊りも硬すぎず柔らかすぎず、中央～東アナトリアの影響もある。
◆カルシュラマ Karşılama
ギレスン地方の根幹をなす踊りがカルシュラマ。互いに対面して踊る。男女の場合もあれば、男性のみ、女性のみの場合もある。
◆ホロン Horon
偉大なケメンチェ演奏家がGörele出身であることから、その街とその周辺で頻繁に踊られている。この街はトラブゾンと近いことから昔はギレスンとトラブゾンは区別されずに音楽や踊りが共有されていたが、1960年代以降は区別されている。
ホロンの一種Sallamaは女性だけ、男性だけで踊られる。元々は男性のみ3人以上で踊られていたもので、隊列の形は直列、輪、半円など様々。比較的ゆっくりした動きなので、激しく早いホロン（Sık Horon / Sıksara / Sıksaray）へ移行するための前段階とも言える。女性だけのものは男子の模倣から共和国成立後に出来たもので、よりゆっくりとして柔らかく、繊細で可愛らしい踊り。（…といっても普通のホロンにしてはゆっくりめというだけで、ステップをずっと踏んでいるのでかなりハードな踊りではある）
◆コルバストゥ Kolbastı(Fingil-Metelik)
民謡と共に踊られる踊り。今日ではギレスンのほぼすべてのグループがLazutlarまたはDereboyu Kavaklarのどちらかを使用して踊っている。輪になるが基本的に手をつないだりはせず、一人一人がジタバタするような小刻みなステップを踏むという、そこそこ自由度の高い踊り。他の地域ではあまり見られないように思う。
◇代表的な踊り
Giresun Karşılaması / Üç Ayak / Gürcü Sallaması
Tüfekli Çandır Karşılaması --- ギレスンで一番踊りが上手いというチャンドゥル村の人々にちなんで名付けられた、ライフルを持つ男性のみで踊られるカルシュラマ。通常よりも遅いリズムのカルシュラマで、ライフルで空中や地上を撃つ動作が含まれる。
Tuzcuoğlu Horonu / Piçoğlu Sıksarası --- ケメンチェ演奏家の名が付いた曲と踊り。
Çavuşlu Horonu / Püsküllü --- Kız Sallaması
Merekete Sarı Saman --- Erkek Sallaması
Oy Bahçenize Ben Giremedim / Lazutlar / O Yaylanın Çimenine／Sokakbaşı Meyhane --- Kolbastı
使われる楽器
◆ダヴル Davul ／ ズルナ Zurna / ケメンチェ Kemençe
◇その他：女性は他に デフ Def や ウード Ud 、 バーラマ Bağlamaの伴奏で踊る。
コルバストゥの場合はバーラマが最も良く使われる。
衣装
◆基本的には黒海共通の要素が多い。
◆女性は
YaşmakやBürümcekなどとも呼ばれる頭用スカーフ Çemberを巻く。黒、黄色、白が多く、オヤ付き。膝までの長さのFistan（長そでワンピース）の上にYelek（前開きベスト）を着用。ひざ下までのŞalvar（İç Donu / Tıman）をはき、Acem Şalı(ペルシャ由来の模様織ショール)などを腰に巻き、その上からKeşan Peştemal(白と赤の縞模様または市松模様の布で、この地方では日常的に頭や体に巻くのに使用していた)を巻く。Çorap（靴下）は膝丈でウール。様々な色やモチーフ編み込みのものもあったようだが、現在は主に白。1950年代より前はÇarık（革サンダル）やÇapula（前が少し上がって尖った、オスマン帝国時代に使われていた靴。祭礼時などに着用）を履いていたがその後は靴を履き始め、現在はかかとの無いフラットシューズである黒のYemeniを履く。Beşibiryerdeと呼ばれる大きな金貨などを首に付け、腕には金の編込ブレスレットHasır Bilezikなどをつける。
民族衣装としては、若い女子のみ頭に銀のTepelik（冠）、既婚者は金のTepelikを着用することもあり（共和国成立以前）、またFistanの上にYaylık(İman Tahtası：信仰の板：とも呼ばれる)という胸を覆う布を着用していたそうだが、今はどちらも使われていない。また、ヘーゼルナッツの木の灰で眉を描いたり、チチタケ（Geyik Mantar：キノコ）の汁を使い赤い染料を作って顔に塗ったりしていたが、現在は化粧品を使用。
◆男性は
Kabalak（Kara Başlık:黒い頭飾り）を被り耳の上で結ぶ。İç GöynekまたはMintan（バンドカラーのシャツ）を着、ダブルボタンのYelek（ベスト）、Aba（ボタンの無い長袖ジャケットで抱き合わせ）を着用。足首に向かって細いズボンZıpka(Pantolon)をはく。AbaとZıpkaのサイドと端は紐刺繍で飾られている。この2つの布地は元々は地方の方言でÇöpürと呼ばれる山羊の毛を使って簡素に織られたKaramantuという黒色で25㎝幅の重く分厚い布地で出来ていたが、今は市販の黒い布で作られている。
Çizme(ブーツ/ギリシャ由来の名称Sapukと呼ばれることもある)を履く。Çerkez Kayışıと呼ばれる飾付きの黒革のベルトを締め、このベルトにナイフや銃などの武器や銃手入れ用の油、狩猟用具等をつけ、銀鎖Gümüş ZincirやタバコポーチTüfün Tahakasıなどを飾る。胸にお守り（Hamaylı）を付け、Tüfekli Çandır Karşılamasıを踊る場合はTüfek（ライフル）を持つ。